戦慄と旋律、失踪と疾走のハードボイルド・ガールズラブ。 血の気多めでちょっと大人な、小説作品としての表現にこだわった一作。 『いくつもの名前(と顔)』を持つことになる主人公・伊月(樹)が、 仲間の少女たちと共に、居場所と安心を求めてその運命と戦う物語。 不器用でもカッコ良く生きる彼女たちの『情念』を見届けてください。 著者曰く「100%百合(と友情)で書かれた小説です」。 ※ストーリーは本書単体で完結しますが、『南雲栞の回顧録』の ネタバレを含む回答編的な作品です。(C94版に挿絵を追加した第2版)
ただ、ただ、静かに。 半身を起こして、小さな彼女は佇んでいた。 絵画を鑑賞するように外の世界を眺めていた。 退屈な色彩で塗られた曇り空。垂直に組み上げられた足場の上で、赤白のタワークレーンが、慎重な水飲み鳥のように鉄骨を運んでいる。(P210)
